従来のECモデルとの違いとD2Cが成長する3つの理由

D2C

昨今のECサイトは、商品ページやUIの見直しばかりではなく、コンテンツの拡充やUXを重視するところが増えています。つまり、D2C型のECサイトが多くなってきたことを表します。

すでに国内D2Cブランドのなかでも成功しているケースは珍しくありません。

では、なぜEC市場でD2Cがこれほど注目されているのでしょうか。今回は、3つの理由に分けてD2Cの成功要因を探っていきます。

 

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D2Cの仕組みと従来のビジネスモデルとの違い

D2Cとは、メーカーがECサイトを通じて消費者に直接商品を販売するビジネス形態のことです。「Direct to Consumer」という名の通り、「工場直販」といえば分かりやすいのではないでしょうか。

D2C2000年代の後半にかけて、主に米国のスタートアップ企業を中心として台頭しました。

日本でもD2Cビジネスに力を入れる企業・ブランドが増えていますが、そのほとんどが「形のある商品を扱う」ことに特徴があります。つまり、サービスではなく製品を扱うブランドが多いということです。

現在では、IT企業を中心にメーカー直販型のビジネスは当たり前のように行われています。たとえば、新しい会計ソフトを導入しようとするとき、そのソフトを開発する企業から購入するのが普通ですよね。

しかし、有形メーカーの基本的なビジネスモデルは従来、卸企業を通じて商品を販売し、卸から小売企業を経てようやく消費者のもとに商品が届きます。卸企業を経由しているので、最終的な商品価格(小売価格)は高くなってしまいます。

また、モノづくりの中心であるメーカーは消費者と直接コンタクトをとることが少ないため、顧客の声が商品に反映されにくいというデメリットもありました。

一方、D2Cはメーカーが消費者に直接商品を売ることができます。販売ルートを持たないメーカーでも、ECサイトを使えば卸や小売企業を仲介する必要がありません。

すでにアパレルや美容業界では、D2Cを活用して成功するブランドが増えつつあります。

D2Cは商品を直販できるメリットばかりではなく、消費者の購買データの収集やエンゲージメント(繋がり)を強化することもできるため、爆発的に成功する可能性を秘めています。

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D2Cが生まれた背景

D2Cが生まれた背景には、消費者の趣味嗜好が多様化したことが大きく関わっています。

アメリカや日本の先進国では豊かな生活を享受できるようになった見返りとして、急速に成熟化が進んでいます。生活に最低限必要な製品は各家庭に行き渡り、すでに商品は飽和状態です。

成熟化する経済で消費者が欲するのは生活必需品ではなく、自分の欲望を満足させてくれるモノへと流れます。つまり、過去に比べて趣味や奢侈品(贅沢なもの)にお金を費やす消費者が増えたということです。

もちろん、趣味や個人の価値観というものは人によって異なります。そのため、大量に商品を作ってマス広告で認知をさせたとしても、消費者はなかなか興味を持たないようになりました。今までの大量生産・大量消費のビジネスモデルが経済に釣り合わなくなったといえるでしょう。

また、成熟経済下の消費者は賢く、セールス目線の広告に惑わされることもなく、ブランドが持つ価値を自分で判断して商品を購入するようになりました。

「自分が好きなものを買う」ので、購買の意思決定にはブランド価値への共感も強く影響しています。

消費者の購買行動と価値観の変化、そして経済環境が一変することで大きな影響を受けたのはメーカーや小売店です。従来のような大量消費に着目したままのビジネスモデルでは、安定した売上を確保しておくことばかりか、顧客を繋ぎとめておくすら難しくなりました。

D2Cは、セールス一辺倒だった流通システムを見直し、より消費者との関係性を強固にするために誕生しました。

消費者と直に取引をすることで接点を増やし、ブランドに対するロイヤリティを高めることこそD2Cの主な役割です。

 

なぜD2Cが注目される?成功の理由とは

D2Cは、もともとアメリカの小規模なスタートアップ企業が始めた取引形態です。しかし、今では日本の中堅~大企業もD2Cサイトの構築に取り組み始め、さらに注目を集めつつあります。

国内D2Cブランドとして大成功をおさめた事例は、日本製のアパレルブランド「ファクトリエ(Factelier)」が有名です。

ファッション業界はメーカーから卸、小売という古いサプライチェーンシステムが踏襲される、非常に保守的な業界です。ファクトリエはあえてそのタブーを犯しD2Cに参入し、設立から約4年で売上10億円を達成しています。広告費もほとんどかけておらず、異例のケースといえるでしょう。

ファクトリエの成長を支えたのはD2Cというビジネスモデルが大きく寄与しています。ここでは、D2Cの成功要因を3つの理由に分けて解説していきます。

 

理由(1EC市場の規模拡大

D2Cの成功に欠かせない要因として、日本のEC市場(BtoC)が右肩上がりに成長していることが挙げられます。消費者向けのEC市場は2010年の77,880億円から拡大を続け、2018年には179,845億円へと約2.5倍に成長しました。
(参考:経済産業省 2018年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

D2Cという新たなビジネス形態でも、ECサイトを通じて物販を行うことは従来と変わりません。そのため、市場全体の規模が拡大することにより、自然と売上増の恩恵を受けやすくなります。

ただ、EC市場は楽天やヤフー、アマゾンなどの大型ショッピングモールが猛威を振るっています。そのなかでなぜ、小規模のビジネスを展開するD2Cサイトが安定した売上を確保できるのでしょうか。

理由(2)ネットを利用した情報発信・受信が当たり前に

D2Cが台頭する理由として、インターネットでの情報発信・受信が一般化したことが影響しています。Webを通じた情報収集はもちろん、今ではスマホが高機能化したことによりモバイルブラウジングが当たり前になりました。

その結果、企業はECサイトを通じてブランド価値を効果的にPRできるようになっています。たとえば、SEOやコンテンツマーケティングを実施することで、小規模なECサイトでも検索エンジンから顧客を流入させることができます。

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ユーザー側からすると、ブランドの価値をしっかりと確認したうえで商品を購入できる点がメリットです。また、D2Cサイトにはお悩み解決コンテンツ(例:美容ブランドの肌のトラブル解決コンテンツなど)が用意されていることが多く、ユーザーは商品を購入する前に、必要な知識や情報を効率的に取得できます。

理由(3)上質な製品をリーズナブルに

D2Cが成功する要因として、高品質な商品がリーズナブルな価格で提供されている点が非常に大きいといえるでしょう。

卸や小売業者を経由しないことにより中間マージンがカットされ、それだけ安い価格で消費者に商品を届けることができます。もちろん自社のECサイトを活用するので、従来のようにショッピングモールに出店する手数料もかかりません。

成功しているD2Cブランドのほとんどは、上質な製品を扱っており、その価値をECサイト内で明確に打ち出しています。消費者がブランド価値に共感しやすい仕組みがたくさん用意されているため、ロイヤリティと売上の向上に繋がっているのです。

 

【まとめ】D2Cのメリットとデメリットも理解しておこう

消費者の価値観や経済環境の変化により、有形商品を扱うアパレルや美容、食品といった業界も大きく変わりつつあります。先鋭的なD2Cブランドはすでに自社ECサイトを設立し、消費者の役に立つコンテンツを拡充し、顧客とのエンゲージメントを強化しています。

ただし、D2Cというビジネスモデルが万能というわけではありません。D2C型のECサイトを導入すれば必ず売上が向上するわけでもないでしょう。要は、自社の商品や販売モデルにD2Cが合うか、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

従来のビジネス形態や今回のD2Cにも一長一短があります。両者を理解することで、自社にD2Cが向いているのかを知ることができます。

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